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side.千夏
電話が、鳴った。
ゆうじは電話を取って、僕にはよくわからない話をしていた。
僕がみたことない顔だった。
楽しそうに、誰かと喋って、笑ってた。
僕とゆうじの住む世界が違うのは、知ってる。
だから、怖いんだ。
ゆうじはいつでも僕のもとから離れていける。
僕がいなくったって、生きていける。
僕が知らないゆうじが、たくさんあって。
「や、やぁ、っ……」
いつの間にか、泣いてしまっていた。
僕は、いろんな事を知って。
いろんな事が出来るようになった。
だけど、ゆうじがいないと駄目で。
代わりなんてない。
ゆうじがいないと、僕は生きていけない。
「行かないで、っ……」
「………なぁんだ」
ゆうじが溜め息をついて、腕の力を緩めた。
僕もゆうじの顔を見ると、優しく、笑っていて。
ほっぺたに、ちゅってしてくれた。
「俺ね、怖かったの」
「こ、わ?」
「千夏がどっかいっちゃうのが」
ゆうじが、涙をぬぐってくれながら、ゆっくり話してくれた。
僕が、いろんな事を知って、ゆうじの遠くに行ってしまうかもしれないってこと。
ゆうじが、それを怖いって思ってたこと。
(……あ、れ)
一緒、だったのかなぁ。
「どこも、いかない……ゆうじが、いい、いちばんっ……」
「ん、ありがと。俺もどこにも行かないからね」
ずっと一緒にいるって、信じてもいいですか?
「でも……ゆ、じは、違うでしょ、」
「え」
「いつか、たいせつなひと、できて……幸せに、なるの」
テレビで、見たんだ。
大切な人と、こいびと、するの。
僕は普通じゃないから駄目だけど、ゆうじはいつか、こいびと、するはずだから。
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