3
 

ご飯のあとは、部屋でごろごろする。

千夏の部屋はあてがわれているけれど、基本的には俺の部屋で過ごしている。
不自由なほど狭くはないし、何より千夏が安心するなら、俺はそれでよかった。



「っ!」
「あ、ごめん」



俺は課題をして、千夏はベッドに寝転びながらテレビを見ていたところ。
突然鳴った携帯に、千夏がびくっと反応した。
同じクラスのやつからの電話だった。

内容はなんと他愛もないこと。
冗談を言われて笑って、電話を切った。



「………千夏?」
「……」



いつの間にかデスクに座る俺の側に来ていて、きゅっと袖を掴んでいた。
どうしたんだろう、と俯いて見えない千夏の表情を推し量っていると、くいっと引かれる。



「っわ、なに、」



それほど力は強くないけれど、頑なな意志、が見えて。
素直に着いていくと、ベッドにすわらされた。
え、え、と戸惑う間に、千夏が膝に乗ってきた。



「……ち、な……?」
「や!」


膝に乗って、首に腕をまきつけて、ぎゅうっと抱き締められる。
控えめなそれはあっても、こんなにあからさまなものははじめてで、俺は戸惑うばかりだった。

しかも、やっ、て。



「なに、どうしたの」
「やぁー……」



ぎゅう、としがみついてくる腕は、微かに震えていて。
よくわからなかったけれど、俺もその細い腰に腕を回した。



「どしたの、言って?」
「っ……や、なの」
「いや?」



諭すように、強ばる身体を解すように、問いただした。



「笑う、の……ちが、とこ、みたい」
「?」
「わかってる、ちがう、けどっ……や、どこに行っちゃうの」



気付いたら、千夏は泣き出してしまった。



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