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ご飯は、基本的に二人だ。
親父は仕事で忙しいし、お手伝いさんたちは夕方で帰ってしまうから。

広いテーブルで二人寄り添って。



「……ちな」
「う、」
「また人参残してるー」



サラダの隅っこに、オレンジ色の塊。
もともと少食すぎる千夏には、好き嫌いせずになんでも食べてほしいと思ってしまう。



「おいしく、ないんだも……」



しょぼ、としながら千夏は言う。
苛めるつもりはないから、ただ小さいものを箸に取った。



「じゃ、一つだけ、ね?」
「あ、う」
「はい、あーん」



俺の言葉に千夏は逆らえないとわかっているから。
目をぎゅっと瞑って、小さく口を開けてくれた。
なんだか、可愛い。



「よし、いいこいいこ」
「んぐ……」



未だに険しい顔をしたままだったけれど、頭を撫でると表情が和らいだ。



「前より、食べられるようになったね。きつくない?」
「……ない、」



それでも、まだまだ平均をかなり下回っているけれど。
俺と二つしか違わないはずなのに、身長は頭一つ分は余裕で差がある。
腕だっておんなのこのそれと言われても納得するくらいの細さだし、全体的に線が細い。
太れ、鍛えろ、とは言わないけれど、やっぱり健康的な体型にはなってほしい。



「ごちそ、さまでした」
「はい、ごちそうさまでした」



きちんと手を合わせて、少しだけ目を瞑って、祈るように言う。

当たり前の世界で、生きてこなかったから。
食事があることが普通じゃない世界で、一人で生きてきたから。
一つ一つに感謝しながら、千夏は生きている。

その姿を見るたびに、絶対に元の生活はさせたくない、思い出させたくないと強く思う。



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