5
 

side.航



奈津が、泣いた。

狂いたくない、怖い、助けて、と小さい身体を震わせながら。
俺はただ抱き締めて、ぽん、と背中を叩くしかできなかった。



「眠れな、こわっ……わか、ない、」
「ん、全部吐き出していいよ」
「やだ、狂いたくないっ……」



これ以上ないってくらいに、ぎゅっとしがみついてきた。



「大丈夫だよ、俺が側にいるよ」
「こわい、っう、」
「俺が、怖いの忘れさせてあげる」



額に、頬に、鼻に、たくさんのキスを降らせた。
奈津が少し落ち着いたところで、唇に。



「好き、大好きだよ。奈津がどんななっても、ずっと側にいるからね」
「っ……こ、う」
「うん。奈津、もっと俺の名前、呼んで?」



怖いことも、忘れてしまうくらいに。



「こっ…こう、っ……こお、航っ」
「ん、」



何度も名前を呼べば、何度も返事してあげる。
何度も怖くなれば、何度も安心させてあげる。



「すき、うそつき、ごめんなさいー……」
「ん、いいよ。一緒に寝よ?」
「っ………」
「眠れなくても、ずっと、隣にいるよ」



無条件に、好きだから



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