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side.航
「奈津、」
奈津を保健室に連れていった瞬間、満月先生が険しい顔をして椅子から腰をあげた。
俺はふらつく奈津を支えながら、ソファに座るよう促した。
「休ませたがいいかと思ったけど、一人で寮に置いとくの心配で」
「いえ、賢明です」
満月先生はソファにくたりとしている奈津の隣に座った。
脈や熱を測って、様子を伺っていた。
最近、目に見えて奈津の体調が悪くなった。
心配で一緒に寝ようとしても、ごめん、と拒まれてしまう。
「……う……」
きつそうに息をしている。
食欲がないようで、日に日に弱っていくばかりだった。
満月先生が一目見て心配するのも、無理はなかった。
「原因は、わかりますか」
「わか、ない……」
「そうですか……」
原因がわからないと、どうしようも出来ない。
けれど一番つらいのは奈津だとわかっているから、不安がらせたくなかった。
「今日はもう横になりなさい」
「は、い……」
「高梨は教室へ」
「っでも、」
「大丈夫です。奈津には私がついています」
ね、と先生が安心させるように笑ってくれた。
大丈夫なわけない、と思った。
先生を信頼してないわけじゃなく、奈津の状態が。
何がきっかけになった?
何が起きている?
何が奈津を苦しませる?
ぐるぐるわからないまま、思考が止まることはなかった。
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