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side.満月



薬は全て、吐いてしまった。
眠れない夜が続くんだ。
長い長い、夜が。



「や、だった、のに……っ!」
「………」
「ねむれなっ……ひど、いっ」



ベッドに向かい合わせに座らされ、俺は恭平の肩を何度も叩いた。
力の入らないそれに、恭平はなんの表情も変えなかった。



「も、やだ……っ!」
「っ」
「!」



肩を叩こうとした手が、するんと抜けた。
恭平の頬にそれは触れて、ばしっという鈍い音と共に恭平の表情が歪んだ。



「あ……」
「………」
「ごめ、なさっ………」



声が震えた。
恭平の頬が、赤くなってる。
恭平はただ何も言わず、俺をじっと見つめるだけだった。



「ごめ、おれ、っ」
「……ん、」
「ごめん、ねぇっ」
「ん」



泣きじゃくり始めた俺を、抱き締めてくれた。
頭を撫でられたり、背中を擦られたり。



「こわ、こわかっ……」
「ん、何が怖かった?」
「いなくなっ、恭平も、いなくなる、のが」
「俺はいなくならないよ」
「うそ、みんないなくなるんだ、俺のっ……おれの、前で」



今ある手の温かさが、いつか消えていくものだと知っていたならば。
おれは、手を伸ばすことは、できない。



「だから、今だけっ……一緒、眠りたい、のに、ねむれなっ……声が、」
「ん、まだ、声する?」
「っ……あ、やっ、こわいっ」



ざわざわ。
ざわざわする。
必死に恭平にしがみついていたら、頬を撫でられた。
耳元で、声がした。



「俺の声、聞こえる?」
「あ………」
「俺の声だけ聞いて、俺はずっと、ここにいるから」



知ってる、
この優しい声は、



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