3
 

side.恭平



「……ん……?」



がたんっ、と何かが倒れる音で目を覚ました。
腕のなかの温もりはなく、あぁ、そうか、と身体を起こした。



「………」



リビングで見た光景に、俺はただ、もの悲しさを覚えただけだった。

床に散らばる薬と、机から水を滴らせる倒れたコップと、静かに震える、満月。
口元を押さえて震えて、固く閉じた目からは涙がこぼれていた。
顔色は、悪い。



「……満月、」
「っ……やっ、」
「ヤじゃないだろ」



ついさっきとは違う弱々しい様子を見ても、やけに頭は冷静だった。
力なく暴れる満月を抱き抱えて、洗面所に運び出した。
嫌がる口に力づくで指を突っ込み、無理矢理吐かせた。



「まだ薬残ってるだろ」
「っや、けほっ……やぁ…」



嫌だ、眠りたい、眠れない、と満月が泣き叫ぶ中、俺は吐かせ続けた。



「ふ、ぇ……っ、う、けほっ」
「………」
「や、やだ、ねむれ、ないっ……」
「わかったから」
「げほげほっ、は、あっ」



一通り吐かせて口を濯がせた頃には、満月はぐったりとしてしまっていた。
すがる力もない満月を、俺は構わず抱えて、寝室に戻った。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -