6
廊下で立ち止まって涙を拭っていると、後ろから足音がした。
慌てて目を擦って振り向こうとしたら、腕を引かれた。
「りょ、う」
「………」
使われていない空き教室。
引きずり込まれた僕は、壁を背後に両側に涼の手がつかれ、動けない状態になっていた。
うなだれたままの涼の明るい髪が、呼吸にあわせて上下にゆれていた。
「どいて、よっ」
「なあ……なんで、無視すんの?」
「っ………」
真っ直ぐな涼の目が、僕を射ぬいた。
「だっ……僕のこと、気持ち悪いって、思っ…」
「思ってないっつの。……むしろ」
涼の冷たい手が、そっと頬に触れた。
「あの日から、気になって、しょうがねえっつの……」
「………え?」
混乱。
あの日?
僕が言っちゃった日?
何で?
「へ、え、だっ…道元、さんと……付き合っ」
「ねーよ。……告られたけど」
「っ……じゃあ、」
また涙が出そうになる。
その先は聞きたくない、けど。
「っ……この、鈍感」
「ふ、えっ……」
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