3
side.航
様子が可笑しいとは、思っていた。
奈津は俺を部屋に入れなくなり、口数が減った。
明らかに眠れていないようで、ふらふらしていた。
俺が問い詰めるのも、無理はなかった。
「やっ……う、っ……」
「奈津、起きて」
「ひっ……!」
放課後、誰もいない保健室で、奈津は夢にうなされていた。
揺すり起こすと、恐怖で目が揺れていた。
「ね、なんかあった?」
「っ………」
「言って」
奈津はうつむいたままだった。
ちらりと見えた首筋に、赤い痣が見えた。
俺のじゃ、ない。
「……それ、」
「あっ……!」
「どうしたの」
「こ、には、関係、ないっ……」
………なんだ、それ。
「俺の他に、好きな人でも出来た?」
奈津からの返事はなく、慌てているだけだった。
「……わかった」
俺と一緒にいたがらないのは、このせいなのだろう。
奈津の隣にいる資格を、俺は失っただけだ。
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