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『放課後、昇降口にきて』
始まりは、航からのそんなメールだった。
いつもは保健室まで迎えに来てくれるから、どうしたんだろうと思った。
でも、きっと僕にはわからない事情が航の住む世界にはあるだろうし、と思って、何も疑わなかった。
それが、間違いだった。
「………」
一人歩いて、昇降口に向かった。
後ろからやってくる足音。
振り替える間もなく、腕をくん、と引かれた。
「こ、っ……」
引きずり込まれたのは、空き教室。
突然の暗闇に、目をつむった。
背中に感じるのは、冷たく硬い感触。
目を開けた先にあったのは、知らない笑顔だった。
「……かーわいい」
「なっ……だ、れ……っや!」
首もとに、息がかかった。
たすけて、たすけて。
頭の中には、その言葉はしか浮かばなかった。
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