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side.葵
「はあ……」
大学からの帰り道、思わず溜め息がでた。
僕の両親は薬剤師で、僕も薬学部に通っている。
今は実習も入って、毎日が忙しい。
「………あ…」
ポケットの中で携帯が震えた。
受信したメールは、朝倉さんからだった。
『夜11時、家』
短いそれは、ほぼ毎日くる呼び出し。
ぱたん、と携帯を閉じた。
行きたくない。
でも、行かなくちゃ。
行ってもひどいことをされるのに、行かなかったらもっとひどいことになる。
(っ、え……)
僕の家は目の前なのに、足が進まない。
くらり、視界が歪んだ。
(だめ、だ……)
気持ち悪い。
最近、よく眠れなかったから。
ご飯、ちゃんと食べたの、いつだっけ……?
「っは、」
目の前が真っ暗になって、身体が、
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