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side.葵
「ん……」
僕、三上葵は静かに目を覚ました。
見知ったそこは、他人の匂いがするベッド。
朝倉さんの、部屋。
「っつ……」
下腹部に鈍痛がした。
見下ろした自分の身体には、至る所に跡がある。
僕と朝倉さんは昔からの知り合いで、今は、よくわからない。
付き合ってもないのに、僕は弱みを握られて、朝倉さんに抱かれている。
昔は、違ったのに。
いつから間違えたんだろう。
「………」
おかしい、と思う。
間違っているとも。
朝倉さんは頭が良くて、何を考えているのかわからない。
僕を、性欲処理として、いつまで使う気なのか。
僕は朝倉さんに踊らされてばかりで、どうしようもない。
「……やば、っ」
時計を見て絶句した。
大学の時間が間近だった。
昨夜のうちにシャワーを浴びていて良かったと安堵しながら、着替えはじめた。
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