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side.譲



家に帰って、メールがきていることに気が付いた。



『明日、お家行ってもいいですか』



陸だ。
明日は金曜日だから。

陸からのメールは嬉しいのに、心は、沈んだまま。
こんな状態で会っても、繊細な陸は気付いてしまう。
気付かれて、傷つけてしまう。

そう考えるだけの理性は残っていて、仕事があるから家にはいない、ごめん、と返事をした。



「………」



引き出しの奥に保管していた、シルバーリング。
律とお揃いのそれは、葬式以来、身につけていない。
ひやりと小さいながらも冷たさを主張するそれは、血が通わなくなった律のようで。



「律………」



ただ黙って、握り締めた。



「律、律、っ……」



律が生きていたら、今頃どうなっていたのだろうか。
陸に惹かれることは、なかったのだろうか。

そう思うことは、陸を傷付けることになるとわかっていたけれど。
わかっていても、ただ、律を渇望する。

俺はまだ、立ち直っていないのだろうか。



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