2
side.譲
家に帰って、メールがきていることに気が付いた。
『明日、お家行ってもいいですか』
陸だ。
明日は金曜日だから。
陸からのメールは嬉しいのに、心は、沈んだまま。
こんな状態で会っても、繊細な陸は気付いてしまう。
気付かれて、傷つけてしまう。
そう考えるだけの理性は残っていて、仕事があるから家にはいない、ごめん、と返事をした。
「………」
引き出しの奥に保管していた、シルバーリング。
律とお揃いのそれは、葬式以来、身につけていない。
ひやりと小さいながらも冷たさを主張するそれは、血が通わなくなった律のようで。
「律………」
ただ黙って、握り締めた。
「律、律、っ……」
律が生きていたら、今頃どうなっていたのだろうか。
陸に惹かれることは、なかったのだろうか。
そう思うことは、陸を傷付けることになるとわかっていたけれど。
わかっていても、ただ、律を渇望する。
俺はまだ、立ち直っていないのだろうか。
前へ top 次へ