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side.譲
「……譲?」
「え……」
学校から退勤した後。
久しぶりに遠出して買い物をした、そんな街中。
「ほら、やっぱ譲だ!」
「……あ、西野か!」
「……一瞬忘れてただろ、俺のこと」
同じ高校だった、西野。
大学は違って疎遠になったけど、それまではそこそこ、仲は良かった。
「この辺住んでんの?」
「や、隣街で……西野は?」
「俺は転勤でこっち来たばっか!いや、すげぇ偶然」
昔から変わらない無邪気な笑顔を見せる西野に、俺も懐かしくなる。
高校時代、馬鹿みたいに騒いでたあの時、俺の隣には、
「つーか……あれ以来、だよな、雨宮の……」
案の定、西野が口にした。
律の、葬式。
「あ……ごめん、俺、」
「や、いい。昔の事だしな」
俺が一際、律と仲が良かったのは、知られていた。
気を遣って俺は西野に笑い返したが、内心は、荒れてしまった。
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