1
 

side.譲



「……譲?」
「え……」



学校から退勤した後。
久しぶりに遠出して買い物をした、そんな街中。



「ほら、やっぱ譲だ!」
「……あ、西野か!」
「……一瞬忘れてただろ、俺のこと」



同じ高校だった、西野。
大学は違って疎遠になったけど、それまではそこそこ、仲は良かった。



「この辺住んでんの?」
「や、隣街で……西野は?」
「俺は転勤でこっち来たばっか!いや、すげぇ偶然」



昔から変わらない無邪気な笑顔を見せる西野に、俺も懐かしくなる。
高校時代、馬鹿みたいに騒いでたあの時、俺の隣には、



「つーか……あれ以来、だよな、雨宮の……」



案の定、西野が口にした。
律の、葬式。



「あ……ごめん、俺、」
「や、いい。昔の事だしな」



俺が一際、律と仲が良かったのは、知られていた。

気を遣って俺は西野に笑い返したが、内心は、荒れてしまった。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -