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「奈津、はさ」
「……?」
「教室で勉強したい、とか」
思わないの?と航は伏し目がちに聞いてきた。
「よく、わかんない」
「……そっか」
僕は学校とかいうものに、まともに通ったことがない。
小学校や中学校でさえも、存在自体知らなかった。
高校だって、勉強するために来てるわけじゃない。
ここで働く満月先生の傍にいるため。
遠い親戚である学校長の計らいで、入れてもらったみたいなもんだ。
だから、教室だなんて。
まるで遠い世界のもの。
「楽しい、?」
「教室?……まあ、友達とかいるし。勉強は嫌だけど」
「高梨は授業をさぼりすぎです。今もですし。生徒会のくせに」
「いや、これでも俺、成績いいんだよっ」
「知りません」
わあわあと、航が満月先生に反発している。
……よく、わかんない世界。
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