5
side.執事
千夏様が戸惑っているのがわかった。
骨が浮かぶ程痩せた背中を擦るように抱き締めて、私は、決めた。
「よく、わから、ない」
抱き締められることに慣れていない千夏様は身体を固くさせて、僅かな力で突き放してくる。
なんて、細い腕をしているんだろう。
苦しみを背負うには、この子はあまりに、小さすぎる。
「わからなくて、いいです。ただ……」
「……?」
「ただ、私の前では、泣いてください……」
私は味方だと伝えるように、ぽんぽん、と背中を叩いた。
「あ……」
千夏様が小さく震えて、華奢な腕が私の背中に回った。
「う、えー…っ…う、っ」
少しずつでいい。
彼を、いつかここから、
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