3
side.執事
私と千夏様が残された。
「はぁ、あ゛、っ」
息を絶え絶えに、ベッドにくたりと倒れこんでいる。
口の端から私が吐き出したものが漏れ、千夏様自身のと、ご主人様のとでひどく汚れていた。
白濁と、汗と。
痣と、傷と。
「うぇ、っ……う、」
「っ……いけません!」
一瞬の隙だった。
投げ出した左腕に、千夏様は自ら爪を立てた。
じわ、と遅れて血が滲む。
どれだけの思いで、どれだけの苦しみで、これだけ力を込められるのだろう。
「あ゛ーっ!あ、やぁっ」
「落ち着いてくださいっ、大丈夫ですっ……」
「や、あ゛あぁぁっ」
腕を取って止めても、暴れ泣き叫ぶ。
次第に疲れたのか力がなくなって、ただ無表情に涙を流すだけになった。
「千夏様……」
「………」
「申し訳、ありません……私はあなたに、っ」
「……し、て、」
虚ろな目は、未来を見ていない。
「ころ、して」
また一つ、涙が流れた。
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