5
side.朝倉
むかつく。
むかつくむかつく。
誰だ、こいつに触ったのは。
「えっ、う、うー…っ…」
葵は泣き続ける。
「ねぇ、葵は俺のこと嫌い?」
「っ、え……」
俺にしては珍しく、優しく声をかける。
そっと頬を撫でると、葵が戸惑うのがわかった。
「嫌いなら、でて行っていいよ。俺にもう関わらなくても。俺も葵には関わらないようにするから」
葵が驚いたように目を見開く。
俺は知っている。
葵は俺以外、何も持ってないことを。
「や、やだあっ」
「なんで?」
くすり、と笑う。
「僕、朝倉さんしかいないっ……僕には、朝倉さんがいないと、駄目だから……っ」
そう、仕向けたのは、俺。
可愛い、愚かな、俺の葵。
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