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「あったかい……」
広い露天風呂に、二人。
向かい合うようにして、桜木は肩まで湯に入った。
「あ、タオル、頭」
「え」
「温泉入ったら、頭にタオル乗せなきゃなんでしょ」
桜木がやけに真面目に言うもんだから、吹き出してしまった。
「んな決まりねーよ」
「なっ……笑うなっ」
「あーおもしれ」
桜木は顔を赤く染めて、ぷいっと背けてしまった。
縁に腕をかけて、そこに頭をのせている。
湯から出た、白い肌。
華奢な背中には引きつった皮膚。
痛々しく残る、それ。
「つ、づ……っ」
「………」
思わず近付いて、つつ、と指でなぞった。
驚いたのかびくっと桜木の身体が揺れた。
「……俺、汚い、よね」
「………汚くねーよ」
「ひあっ……」
ちゅ、ちゅ、と背中にキスをした。
肩、首、耳にあがって、振り向いた桜木の唇に触れた。
「自分で自分のこと、そんなふうに言うな」
「……ごめん……」
「お前が謝ることじゃねーだろ」
濡れた髪を、額から拭った。
泣きだしそうな目が、少し揺れていた。
頬の赤みは湯の温かさからか。
「………あり、がと」
「ん」
微かに笑みを作った唇に、自分のそれを重ねた。
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