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side.綾
そこは家から少し歩いたところにあった。
雑誌にも掲載されるくらいには人気らしく、平日にしては人がたくさんいた。
「こっちだって」
「うん、」
案内されて、部屋へ。
畳の匂いがする和室だ。
部屋の奥にお風呂があるらしく、脱衣場を抜けて戸をあけると、
「わ……!」
「思ったより豪華かも」
檜造りの露天風呂。
なかなか広いそこからは、柔らかく湯気があがっていた。
「テレビでみたやつみたい、」
「なんだそりゃ。……ほら、入ろ」
「うん!」
脱衣場でぱぱっと脱いで、また外に出た。
タオルがあるにしろ、少し肌寒い。
「風邪ひく」
「ぶっ」
ばちゃ、と湯をかけられた。
都築はもう温泉に入っていて、縁に肘をついていた。
「なんで先にっ」
「寒いんだもん」
「俺も入る!」
わざと水しぶきをたてて、湯に入ってやった。
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