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「………」
「………」
「……ひまー…」
ソファに寝転んでいた桜木が寝返りを打った。
ベランダで煙草を吸っていた俺は、それを遠目で見るばかり。
「ひま、ひまひまひまっ」
「寝れば」
「やー……」
たしかに、と思う。
俺は大学にも行っているし、外に出ることも普通にする。
けれど桜木はほとんど外にでない。
散歩がてら出ても、他人を恐れる桜木はそう遠くに行けない。
夜なら尚更だ。
「……どっか行く?」
「っ……行く!」
ぴょん、とソファの上に飛び起きた。
そんなに行きたいのかと驚きつつ、けれど行くあてはない。
「どこ行きたいの」
ついでに今日は、時間がたっぷりある。
桜木は目をきらきらさせながら、「うーん」と声をくぐもらせた。
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