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春川くんは、僕のことをよく知らないんだ。
何より、今まで話したこともなかったんだから。
僕の、弱さも、
「結城、一緒帰ろ?」
「………」
放課後、教室がざわめくのがわかった。
当然だ、人気者の春川くんが、陰キャラな僕を誘っているのだから。
居たたまれなくなって、教室を出た。
「待って、今日どっか行く?」
「………帰ります」
「うん、帰ろ」
春川くんはニコニコしてる。
調子が狂うったらありゃしない。
僕を、からかっているのだろうか。
「危なっ…」
「!」
またぼんやりしてた。
曲がってきた車に気付かなくて、春川くんが腕をひいてくれた。
「もー……びっくりした」
「あ………」
「大丈夫?腕痛かった?」
「………ありが、とう」
「うん」
黙って寮まで、一緒に帰った。
僕が必要以上に話さなくても、春川くんは気にしないようだった。
その距離が、心地よかった。
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