5
side.綾
「じゃ、帰るね。都築が来るまで居たかったんだけど……」
「仕事なら仕方ないよ。……ありがとう、朝倉さん」
「うん。またね」
パタンとドアが閉まった。
朝倉さんは雰囲気が柔らかくて、優しい。
都築とはまた違う感じで、心地いい。
「まだ、かなぁ……」
午後3時。
ソファに寝転んだ。
もうすぐ帰ってくると聞いたけど、
「……あ、いたの」
「っ!」
唐突にドアが開いた。
反射的に起き上がると、いつもと変わらない都築がいた。
「さ、っき、朝倉さん……」
「あぁ、すれ違った」
荷物を下ろして、ソファの隣に腰掛けてくる。
俺は心の準備が出来てなかったのとで、どうしていいかわからなかった。
それが伝わったのか、都築が肩を引き寄せて抱き締めてきた。
「な、なな……っ」
「寂しかったんだって?」
「っ……!」
「さっき朝倉が言ってた」
朝倉さんめ、と都築の腕の中で朝倉さんを少し恨んだ。
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