5
合鍵で奈津の部屋に入ると、倒れているのが見えた。
息は荒く苦しそうで、投げ出された左腕は、血だらけ。
くたりとしたそれに、頭の中が、真っ白になった。
咄嗟に、身体を抱き起こす。
「奈津、奈津っ」
「こ……お……?」
薄らと、目があいた。
はっはっ、と短い呼吸の間に、俺を呼ぶ声が聞こえる。
過呼吸を抑えるように、俺は奈津の口を塞いだ。
「ん……っ、は」
「ごめん、ごめんな、」
奈津の血で手が染まるのも構わず、それを止めたくて、必死に細い腕を掴んだ。
「なん、で……」
「ごめん、一人にしてごめん、傍にいてやれなくて、ごめん……っ」
謝っても、足りなかった。
けれど奈津は、無事な右腕で、俺の背中にしがみついた。
「どこにも……行かない……っ?」
「うん、ずっと、傍にいる」
「いなくならない……?」
「ん、」
「うっ、ふぇっ、」
「ごめんな……」
もう二度と、奈津にこんな思いをさせまいと誓いながら。
細い身体を離さないよう、強く、抱き締めた。
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