4
 

航が、僕の傍を、離れていく。
考えるのが、辛かった。



「……は、っ」



ソファに蹲って、苦しい胸元を押さえる。
苦しさに生理的な涙が溢れた。

息が、うまくできない。
このまま、死んじゃうのかと思えるくらいに。



「はぁっ、は……っあ」



(……もう、いい、のかな)



航がいなくなるなら、生きてたって。

左腕に手を回した。
ざらりとした皮膚の質感を確かめて、ただ、がむしゃらに引っ掻いた。



「ふぅっ……う、ぇっ」



柔らかな皮膚が破れて、血が流れた。

息が苦しい。
腕が痛い。
心が、悲鳴を上げた。



「行かな……で、っ……」



お母さんも、航も、満月先生も、みんないなくなる。

ソファからずり落ちて、ひやりとするフローリングの床に倒れた。
鼓動にあわせて血が流れて、頭が痛む。
早く、鼓動が止まればいい。



「航……っ、こ……」



返事は、なかった。
目を閉じようとして、



「っ………奈津っ!」



待っていた、声がした。



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