2
その日から、航は話してくれなくなった。
部屋に送り届けて、どこかに行って。
ご飯のとき戻ってきて、一緒に食べて、それぞれの部屋へ。
忙しいのか、日に日に航が疲れているのがわかって、僕も何も話さなかった。
……我が儘なやつは嫌いだって、もういらないって、言われるのが怖かった。
「……でさ、……」
「あ……」
夕方、部屋で本を読んでいたら、廊下から声が聞こえた。
春川くんの声だ、と思って、少しだけドアをあけた。
向かい側、航の部屋に入っていく2人が見えた。
「高梨、最近頑張りすぎなの。たまには遊ぼうぜ!」
「……そう、だな」
「ほら、顔怖い!笑えってー」
「痛い痛い!」
春川くんが、航のほっぺたを引っ張った。
航は、楽しそうに笑った。
僕の前ではしばらく見せていない、そんな、笑顔だった。
「っ………」
そっとドアを閉めた。
僕とは全然話さないのに、春川くんとは、話す。
僕の前では笑ってくれないのに、春川くんの前では、笑う。
「どう、しよ……っ」
僕のこと、嫌いになっちゃったのかなあ……?
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