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「………」
「……なに」
「行っちゃう、の……?」
「……あのなあ」



航が苛立った声を出して、僕はぱっと裾を掴んでいた手を離した。



「……俺だって、他にも用事あんの。生徒会の仕事もあるし、行事とかも……我が儘言わないって約束だったよね?」
「あ、う……」



最近、航は僕を部屋に送り届けると、すぐどこかに行ってしまう。
忙しいのはわかるし、僕よりも、他の人との繋がりが多いことも知ってる。

僕だけ、とはいかない。
わかってるけど、でも、



「奈津、そんな我が儘言うって思わなかった」
「っ………」
「……時間だから行くわ」



言葉は、出なかった。
バタンと閉まるドアを見て、しんと静まりかえる部屋に一人。

傍にいてほしい。
僕の、我が儘なんだ。
ごめんね、と、でも、がいっぱいになった。



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