5
side.満月
恭平の母親に電話すると、搬送された病院を教えてくれた。
運良く病院はすぐ近くで、息を切らした俺は病院の廊下でおばさんにあった。
「満月、くん。ごめんね、約束してんだってね」
「きょうへ、恭平、は」
「あそこの病室よ」
礼も言わないまま、指差された病室へ向かった。
後ろで俺の名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、足は止まらなかった。
ノックもなしに入る。
しん、と静まり返った部屋に。
真っ白な部屋に躊躇した。
「きょ……へ……?」
恭平が一人、横たわっていた。
頬にはガーゼがあてられていて、頭や腕に包帯が巻いてあった。
点滴が落ちる音だけが、そこにはあった。
真っ白な顔をした、恭平。
「恭平、恭平っ……」
掴んだ手は、驚くくらい冷たかった。
びっくりした。
こんな弱々しい恭平を見るのは初めてだった。
俺のそばにいて、いつも笑っていたのに。
「恭平……っ」
ぎゅう、と手を掴んだ。
早く、目を、覚まして。
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