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「え、痛い!?注射っ」
「最初だけだよ、すぐに終わるから」
「ままままって、心の準備っ」
わたわたと慌ててる桜木が面白くて、思わず苦笑。
目があった朝倉も、笑いを噛み締めていた。
「ちょ、服握りすぎ、伸びる」
「今だけっ、」
ぎゅうう、と裾を握られる。
咎めようにも桜木が涙目なので、うっと言葉を詰まらせた。
「力抜いたが痛くないから」
「力抜けなっ……」
「……あー…」
やわやわと頭を撫でると、少しだけ力が抜けた。
「いくよー?」
「うう……」
ぎゅっと目を瞑ったとき、注射の針が細い腕に刺さった。
ほんの数秒だけ血を抜いて、すぐにそれは終わる。
「はい、終わり」
「っはぁ、っ」
息を止めていたのか、桜木が深呼吸をした。
診察室を出て、ロビーで待つ。
桜木は頬を膨らませるように難しい顔をしたまま、一言も話さない。
「桜木?」
「……なに」
「怒ってる?」
「別にっ」
ぷいっと顔を背けられた。
そうされると、なんだかからかいたくなる。
「……さっきは注射怖がってたくせに」
「あっ、あれはっ」
「涙目だったけど」
「う、うっ」
「そんな怖かった?」
自分でしといてなんだけど、ちょっと可哀想に見えてきて、なるべく優しく聞いた。
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