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叩き起こされて、昼飯は桜木が作ったパスタを食う。
うん、うまい。
朝倉に一応連絡をして(お前ら暇だなって言われた)、
「行こ」
「あいー」
桜木が心なしか軽い足取りでついてきた。
朝倉の親が経営する病院までは、バスで15分くらい。
病院はさほど混んでなくて、まだ人ごみが苦手な桜木を考慮してはほっとした。
すぐに診察室に通されて、中に朝倉の父親が見えた。
傍らには朝倉がいる。
研修医ゆえ怪我の診察や軽い手当てはできても、注射まではできないんだろう。
「久しぶり、涼くん」
「ども」
「君が、綾くんだね」
「っ……」
「修の父親だ、よろしくね」
朝倉から軽く話は聞いていたのだろう。
親父さんは人懐っこく笑って、桜木の警戒を和らげようとしていた。
「じゃあ、早速調べようか。綾くん、手を出して」
「……?」
桜木が不思議そうに首を傾げながら、右腕を親父さんに預けた。
ただ警戒は残っているのか、左手でさりげなく俺の服の裾を掴んでいる。
テキパキと液体が上腕部に塗られて、親父さんが注射を出した。
「はい、じゃあ、」
「え、えっ……!」
右腕が掴まれたままで動けなかったけれど、桜木が身を引いたのがわかった。
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