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side.航



「………」



俺は、困っていた。

それは1時間前のこと。



「高梨、いーもんやる」
「は?」



後ろの席、春川が放課後に声をかけてきた。
保健室にいる奈津を迎えに行こうとした矢先。



「ほい」
「……なにこれ」



春川から渡されたのは、掌サイズの透明な袋に入った、



「び・や・く」
「ぶっ……!?」
「じゃーなー」
「ちょ、おまっ、なんでこんなもん持って、」



答えを聞く前に、春川はバタバタと教室を出ていった。
春川は、同じクラスのおとこと付き合ってる。
偏見はないけれど、媚薬なんて使ってるのかと思うとなんだか複雑な気分になり、悶々とした気持ちを追い払う。
ほいほい捨てるのも憚られて、ポケットに滑り込ませて保健室に行った。



(……どうすっかな)



現在、俺の部屋。
俺の位置、キッチン。
奈津の位置、リビング。

いつものように俺が飲み物を出そうとして、ふと、思い出してしまった。
俺の青いマグと、奈津の水色のマグ。
アイスコーヒーが入ったそれを前に、白い錠剤を手にする、俺。



(こんな怪しいもんいれるのはでも春川がくれたやつだし安全性はあるからいいのか、いや何で入れる気満々だよ俺)



うーん、うーん、と一人格闘中。



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