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side.恭平
「うーん……まぁ、考えの一つとして」
「………」
「家から通えるし」
「………」
「……どした?」
俯いたまま満月が話さないので、心配になってきた。
「……やめてよ」
「……?」
「俺に、かまうの、俺に……近付くの」
満月が静かに、マグを机においた。
床に座った膝の上に置いた手が、震えているのが見えた。
「満月?」
「同じ、大学とか……冗談じゃ、ない」
「………」
「やっと、解放されると思っ、」
「満月それ本気で言ってる?」
思わず肩を掴むと、びくりと満月が震えた。
本当は、一人なんて嫌なはずだ。
だけど事件で負い目を感じて、自分のせいで両親が死んだと思わずにはいられなくて、他人を拒んだ。
もう誰も、傷付けないために。
そして、執拗に近付く、俺も。
「何年一緒いると思ってんの、嘘吐いてんのわかるよ」
「うそ、じゃなっ……」
「じゃあ、ちゃんと目ぇ見て言えよ」
怒鳴るようになってしまい、けれど言葉に後悔はなかった。
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