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side.恭平



「どうしようかなーあんま考えてなかったわ……」
「………」



満月は必要以上に話さない。
俺はいつも二手に分かれて帰宅する路地で、満月の腕を掴んだ。



「っ……なに」
「今日、俺んちこない?」
「……こない」
「親いないんだ、だから、な?」



満月は俺の親を見るのもつらいはずだった。
丁度仕事やらでいなかったし、半ば強引に腕を引いた。
気まずい雰囲気は得意ではなかったけれど、もっと、満月と話したかった。

昔のように、笑って欲しかった。
軽い冗談を言ったり、遊んだりしたかった。
今の満月は俺と目も合わせようともしない。
会話してくれるだけいいけれど、でも、辛かった。



「部屋、あがってて。飲み物持ってくる」



抗うだけ無駄だと思ったのか、満月は黙ってついてきた。
階段を上がるのを確認して、キッチンで飲み物を準備した。



「はい、」
「……ありが、とう」



部屋でマグカップを渡すと、ぎこちなくも、受け取ってくれた。

沈黙が苦しい。
俺は咄嗟に、さっきの話題を持ち出した。



「あそこってさ、偏差値なかなか高いよな?俺無理かなー」
「……教育大にするの?」



マグに視線を落としたまま、満月がつぶやいた。



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