3
side.恭平
「どうしようかなーあんま考えてなかったわ……」
「………」
満月は必要以上に話さない。
俺はいつも二手に分かれて帰宅する路地で、満月の腕を掴んだ。
「っ……なに」
「今日、俺んちこない?」
「……こない」
「親いないんだ、だから、な?」
満月は俺の親を見るのもつらいはずだった。
丁度仕事やらでいなかったし、半ば強引に腕を引いた。
気まずい雰囲気は得意ではなかったけれど、もっと、満月と話したかった。
昔のように、笑って欲しかった。
軽い冗談を言ったり、遊んだりしたかった。
今の満月は俺と目も合わせようともしない。
会話してくれるだけいいけれど、でも、辛かった。
「部屋、あがってて。飲み物持ってくる」
抗うだけ無駄だと思ったのか、満月は黙ってついてきた。
階段を上がるのを確認して、キッチンで飲み物を準備した。
「はい、」
「……ありが、とう」
部屋でマグカップを渡すと、ぎこちなくも、受け取ってくれた。
沈黙が苦しい。
俺は咄嗟に、さっきの話題を持ち出した。
「あそこってさ、偏差値なかなか高いよな?俺無理かなー」
「……教育大にするの?」
マグに視線を落としたまま、満月がつぶやいた。
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