2
side.恭平
「進路希望調査、どーする?」
高校3年の春。
俺は満月と帰路に着いていた。
事件後、一時は入院し、精神的にぼろぼろになった満月だったが、今となってはかなり回復していた。
回復したのは良かったけれど、前と同じようにはいかなかった。
「俺はもう決めてるよ」
満月が力なく笑った。
他人行儀な笑い方は、俺の心に刺さる。
満月は事件以来、自分と他人との間に壁を作っていた。
まるで、一人になりたいように。
「どこ?俺、決めてない」
「……教育大」
「隣街の?」
負けじと俺は踏み込もうとするから、満月は最近は観念したようだった。
「じゃ、先生になるんだ」
満月を引き取った遠い親戚は、どこぞの学校長ということを聞いていた。
恩返しにも、満月が教育大に行くつもりなのは、薄々感じてはいた。
前へ top 次へ