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side.恭平



俺の腕の中で、涙の跡を頬に残す満月が眠っていた。
間接照明の光を借りて、そっと、頬を撫でた。

満月が精神的に参るのは、珍しいことじゃない。
俺はただ満月を受け入れて、抱き締めてやることしかできなかった。
満月は俺に縋りついて、何度も名前を呼んで、泣きじゃくった。
ようやく今、泣き疲れたのか眠りについたところだった。



(………つらい、よな)



満月が参るのは弱いからだとは思わない。
好きでそうなったわけじゃないのはわかっているし、一番つらいのが満月だということも理解している。



(……俺は、正しかったんだろうか)



一人、考えた。

満月が心を壊す原因がおきた、高校1年生の夏。
その前から俺たちは仲が良かったし、少なくとも俺は、満月が好きだった。

事件が起きて、満月はぼろぼろになった。
気丈に見せて泣いているのを俺は知っていたし、何より俺を遠ざけようとした。
でも、俺は決めた。
何があっても、満月の傍にいる、と。

その決意が固まったのは、初めて満月が事件後、俺に心を開いたあの日だった。



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