5
side.綾
「都築っ……風邪、うつっ……」
「また俺が看病するから」
「そういう問題じゃっ」
「もとあと言えば、口移しで薬飲ませたのが原因だろうし」
「っ………」
俺が黙ったのを都築が喉で笑った。
「っ……離せ、こらっ」
「やーだ。お前温かいもん」
そういって、ぎゅうっと抱き締められる。
都築の体温が、いつもより少し高いのがわかる。
「桜木、湯たんぽな」
「湯たんぽって……」
「あー眠い……寝よ」
髪を梳くように撫でられて、その手が段々止まって、都築の寝息が聞こえた。
がっちりと、抱き込まれた状態。
……これじゃ、抜け出せやしない。
「……都築……」
「ん……?」
小さく呼ぶと、微かに返事がきた。
寝呆けてるのか。
「……おやすみ……」
「ん……」
離せ、とは言えなかった。
この温もりも悪くないと、思えたから。
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