3
ばたん、とドアが閉まった。
からかうつもりはなかった。
ただ、本当にちょっと身体がだるいだけの微熱だ、あんまり真剣な顔してるもんだから、こっちが申し訳なくなった。
一瞬だけ見えた、泣きそうな顔。
「……はぁ」
帰ってきたら、言うこと聞いてあげよう。
微熱とはいえ、熱は熱。
なんだかとても眠い。
優しい手の、感覚がした。
霞み掛かった意識でははっきりとは認識できず、頭を撫でるそれを、ぼんやりと享受した。
「都築」
「……」
「ごめんね……」
柔らかな、安心する声。
この声の持ち主は、誰?
「……俺、心配、なんだ」
「………」
「都築が、いなくなりそうで、」
まるで、泣き出しそうな、
「っ……俺の、居場所だから、」
だから、早く、元気になって。
擦れた、小さな声は、はっきりと俺の耳に届いた。
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