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side.恭平
「こわ、っ……」
「ん、ゆっくりでいい」
「ち、がっ、赤い、やだ……っ」
……さしずめ、昔の事件を思い出したんだろう。
自分の親が、目の前で殺されて。
しかも、自分の親に。
トラウマになってもおかしくはない。
何がきっかけかはわからないけれど、思い出してしまったのは明白だ。
「おもい、だしたく、ない」
「………」
「いや、怖い、の、やだっ……」
俺には、満月の記憶を消すことはできない。
現場を見てない以上、痛みを共有してやることもできない。
ただ、抱き締めてあげることだけ。
満月はそれでも十分だと言うけれど、俺には、もどかしくて仕方がない。
「たす、けてっ……」
「ん……」
抱き締めて、涙を拭う。
優しくキスをして、お前は一人じゃないよと、安心させる。
「んっ……きょう、へ……すき、」
「俺も好きだよ」
「すき、っ……すき、だから……どこにも、行かないでっ……」
唯一の救いだった、母親を亡くした記憶。
胸が締め付けられる思いだった。
「きょうへっ……恭平、」
「もういいから、口閉じろ」
「んぅっ……ぁ、っ」
愛して満たして、安心させる。
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