5
side.恭平
すぅ、とすぐに眠りについたかと思ったら、苦しそうにうなされ始めた。
揺すり起こすと、その目に映るのは、悲しみ。
思い出したのか、と。
胸が締め付けられる思いだった。
「っ、きょうへ、」
「ん」
「恭平っ……」
意味もなく、何度も名前を呼ばれた。
必死に俺にしがみつく満月の身体は、微かに震えていて。
「ほら、寝な」
「やっ……」
「熱あがってる」
「こわ、」
「俺がいるから。……ずっと、傍にいるから」
大切なものを、目の前で失った悲しみを。
忘れさせるとはいかずとも、和らげてあげたいから。
「な?」
「………うん…」
「好きだ、満月」
「おれ、も……」
「……おやすみ」
「………おやす、み…」
きゅう、と俺のシャツを握り締めたままの手に苦笑した。
「……ずっと、傍にいる」
怖がらなくても、俺は、ずっと、ここにいる。
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