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side.満月
黙って背中を撫でてくれる、恭平の手が温かかった。
それは、昔の手と似てる。
まだ、幸せだった頃。
熱を出した俺を、母さんが介抱してくれた。
子供なりにきつかったけど、母さんが傍にいてくれたから、嬉しかった。
あの時の手は、どこへ?
優しい手が、赤に、染まる。
「……満月!」
「ひっ……」
名前を呼ぶ声で、目を覚ました。
いつの間にか眠っていたようだった。
心臓の動きがやけに速い。
恭平が心配そうに眉を寄せて、俺を見つめている。
「大丈夫か、」
「きょ、へっ……は、」
「ゆっくり息吸って、大丈夫だから」
緩やかなリズムで、恭平が背中を擦ってくれた。
うまく息が吸えなくて、涙が零れる。
「はっ、はぁ……っ」
「いいこ」
「は、ふ、っ……はぁ、」
苦しみから、解放される。
俺は何をしていた?
何を、思い出した?
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