3
side.恭平
「……あいた、かった」
「え?」
「迷惑、かけるの……わかってたけど、でも……」
「………」
俺の心の声が、聞こえたみたいに。
熱で潤んだ満月の目が、じっと俺を見つめていた。
隣に座る俺の服の裾をきゅ、っと握っている。
そういえば、満月が熱を出した時ってあんまり見たことない。
こんな風に、いつもと違って甘えるんだなぁと。
新たな発見と同時に、愛おしくなる。
可愛いこと、言ってくれる。
「ん、いいよ。でもやっぱ心配だし、無理はすんな」
「うん……」
「なんか食べるか?」
「さっき食べた……薬、のんだし、」
さすが保健医、やることはやってる。
「じゃ、大人しく寝とけ」
「きょうへ、は……?」
「俺は飯食う」
「………寝る、まで…いっしょいて……」
「………」
なんだ、こいつ。
普段と全然違う。
甘えたというより、幼児退行。
いつもは気恥ずかしさがあるのか、ちょっと距離を取ったように甘えるのに。
風邪ひいただけで、素直なこと。
「もうちょい詰めて」
「ん……」
可愛いお願い、断れるわけない。
隣に潜り込んで、満月を抱き抱えた。
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