5
 

「……桜木、」



ソファで昼寝をしていた桜木が、急に起き上がった。
目を見開いて、胸元を押さえて、息が荒い。
ひどく汗をかいているのは、嫌な夢を見たのか。



「桜木」
「ひっ……」



声をかけるとびくりと怯えた。
はくはくと口を開けて、ぽろぽろと涙を流している。

驚かさないようにそっと隣に座って、震える身体を抱き込んだ。



「……都築、…?」
「ん」
「俺っ……いやだ、」
「うん、」
「信じてた、けど、違うっ……」



話の意味はわからない。
けれど、子どものようにわんわん泣き始めた桜木の背中を、黙って撫で続けた。



「こわい、っ……いやだ、や、」
「ただの夢だって」
「怖かった、も、やだ…」
「………」



桜木がこうやって夢で泣くたび、どれほどの裏切りを抱えたのかと、胸が痛くなった。



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