5
ぱちぱちがだんだん小さくなって、赤い玉。
ぽとりと、落ちた。
「あー……」
「終わりー。もっかいやろ!次はいっこずつね」
航が手渡してきて、二人で、花火をつけた。
二つの赤い玉が、ぱちぱちなる。
小さくなって、ぽとり。
「落ちちゃった…」
「線香花火、楽しいでしょ」
にこり、航が笑う。
僕が花火を見てたから、急いで買ってきてくれたんだな。
僕の、ために。
「……こう、」
「んー?」
「ありが、……っん」
言葉を遮られるように、唇が重なった。
「俺は、奈津が笑ってくれれば、それでいーの」
「………うん」
「また花火、しよ」
「うん」
「先生とか呼んだりー……怒られちゃうかな?」
夏は、始まったばかり。
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