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side.航
「あ、ついたかな」
「え、やだ、怖っ……」
「だーいじょうぶ。俺も持ってるから」
「離さないで、ね、」
びくびくしてる奈津、かわいい。
好きなこは何しても可愛いと思える。
怖がらせたいわけじゃないから、ちゃんと考えてる。
奈津が苦手な火花があんまりでない、線香花火。
先端にぽうっと丸い玉。
「……これ、火、」
「ちゃんとついてるよ。あ、これ落としちゃだめ、揺らさないで」
きっと、花火もしたことないんだろうな。
一緒に手を握ってじっとしてると、ゆっくり、ぱちぱち……と火花があらわれ始めた。
「わ、わっ……」
「これ以上激しくならないよ。熱くないでしょ」
「う、うん……」
ぱちぱち。
ぱちぱち。
「きれい……」
奈津の顔が、優しく綻んだ。
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