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side.航
「……びっくりした」
寮に帰る途中。
暗いのをいいことに手を繋いだまま道を歩いていると、奈津がびくりとした。
「あ、花火してるんだ」
「はなび……」
家族、だろうか。
親とお兄ちゃんと弟の、4人家族が道端で花火をしていた。
手から伸びる光が、ぼんやりと家族の顔を照らしていた。
「いいなあ……」
奈津がぽつりと呟くのが聞こえた。
それは『花火』になのか。
それとも『家族』か。
「花火好き?」
「好き、だけど……こわいから、持てない」
熱そう、と続けた。
その顔は少しだけ陰っている。
……俺が直接な原因ではないとはいえ、こんな寂しそうな顔はさせたくなかった。
「……よし」
「?」
「なんでもない。……早くご飯食べよ!お腹すいたー」
奈津を、笑わせてあげたい。
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