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side.満月
「せんせ、手っ……いたい、」
「私は大丈夫です」
奈津の、痛みに比べたら。
「怖かったですね。もう、大丈夫ですよ」
「ふ、っ……」
奈津が、ぎゅう、としがみついてきた。
血を流しすぎて力が入らないのか、左腕は投げ出したままだったけれど。
「もっ……やだ、こわ、っ……たすけ、て」
「………ん」
「やだ……っ」
わんわん泣いた。
こうして奈津を抱き締めることは出来ても、その闇を取り払うことが出来ない。
それがもどかしくて。
泣き疲れた奈津が寝て、傷の手当てをした。
どうしたらこれだけ傷付けられるのか、というくらいの傷痕。
奈津の恐怖や不安や悲しみが、この傷に表れているのかと思うと、やるせなかった。
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