3
 

side.満月



「……奈津」



泣く声が聞こえて、カーテンをあけた。

奈津が顔をくしゃくしゃにして泣きながら、腕を赤く染めていた。
また、夢を見たのだろう。



「奈津、」
「ひっ……う、っ」



止めようと肩を掴むけれど、奈津はまだ、自らを傷つけ続けた。

声が、聞こえていない。



「奈津、落ち着いて」
「や、ぁっ!う、」
「っ……」



いつもより、不安定だった。
今まで調子が良かったから、その反動なのかもしれない。

尚も増える傷を止めるべく、カッターナイフを握る奈津の右腕を掴んだ、



「いや、っ!」
「っつ……!」



途端、奈津が抵抗して、俺の右手をカッターが切り裂いた。
じわり、と血が流れる。

奈津の動きが、止まった。



「み、つき、せんせ……?」
「ん」
「え、なん、僕」
「混乱してたみたいですね」
「あ、ごめ……なさっ、手、がっ」



奈津がカタカタと震えだした。
俺は安心させるように、そっと、抱き締めた。



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