3
side.綾
これは、まずい?
「え、あ、もしかして……怒って、る?」
「別に?」
目をあわせてくれない。
キーボードを叩く音だけが、そこに響いていた。
やばい、これ。
都築を怒らせた。
「え、ごめん、都築」
「……何泣きそうな顔してんの」
気付いたら、都築がこっちを見ていた。
いつもの、都築だ。
「なっ…泣きそう、じゃっ…」
「……あー」
言われたら、なんだか、ほっとしてしまったのか。
俺はガキみたいにぼろぼろと、泣き出してしまった。
都築が膝で立って俺と目線を合わせ、袖を伸ばして涙を拭ってくれた。
ちょっと不器用で荒い拭い方に、なんでか涙が止まらなくなった。
「何で泣いてんの」
「っ……都築、が……怒っ…」
「え、おれ?」
心底不思議そうな声。
俺もえ、と動揺した。
前へ top 次へ