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side.綾
至って普通なその声に、かちんときた。
「……気分悪い」
「え」
「吐きそう」
ソファに立てた膝に顔を埋めて言い放つと、脇に手が滑り込まれた。
抱えあげられて、洗面所に連れて行かれるのがわかる。
都築の、ばーか。
「……わ、っ」
都築の手からするりと抜けて、自分の足で立った。
きょとんとしたような都築の表情は、何だか笑えた。
「びっくりした?嘘だってーの」
え、と都築は声を漏らす。
「ちょっと邪魔してやろうかなーって、っ痛!」
無言のまま、ぺし、と頭を叩かれた。
言うほど、痛くはないけれど。
わざと頭を押さえる俺を置いて、都築はさっさとリビングに戻って行った。
「ちょっ……」
俺もリビングに戻って、またパソコンの前に座った都築の、後ろのソファに座った。
都築、無言。
「何かリアクションしろよー」
「………」
……あれ?
空気が、なんか。
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