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side.恭平
保健室に着くと、話し声が聞こえた。
生徒に見られたらまずいかも、と足を止めるが、はたと気になることが。
(………この声)
例の、高島先生。
怪我でもしたのか?と思いながら、しかし中に入ることはできない。
周りに人がいないのを良いことに、そっとドアに耳を近づけた。
「………好きなんです」
低い、落ち着いた声は高島先生のもの。
(っえ……何だ、これ)
「……私もですよ」
透き通った声は―――満月のもの。
気付いたらその場から立ち去っていた。
どうしていいか、わからなかった。
高島先生が、満月を、好き?
満月は、高島先生を―――?
「っ………」
立ち止まって、荒い息のまま、壁を殴った。
冗談じゃない。
俺から満月が、離れていくなんて。
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